接骨院が法人から個人成りする時の注意点
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こんにちは、ミネルバ税理士法人です。このブログでは、「会社設立」や「起業」に関するノウハウやポイントを中心に分かりやすくご紹介しています。今回は、「接骨院が法人から個人成りする時の注意点」について整理してみました。ぜひ、参考にしてください。
そもそも「個人成り」とは?
個人成りとは、法人(株式会社・合同会社等)が行っていた事業を廃止または縮小し、個人事業主として同じ事業を継続することを指します。
接骨院の場合、多くは以下のような流れをたどります。
1.法人(株式会社・合同会社等)で接骨院を運営する。
2.法人を解散・清算、または、休眠化する。
3.代表者個人が柔道整復師として新たに施術所を開設する旨の届出を提出する。
4.個人事業主として保険請求・経営を再開する。
一見シンプルですが、接骨院特有の手続きが随所に絡むため、順番を間違えると療養費の請求が止まったり、廃業届のタイミング等で思わぬ税負担が発生したりします。
注意点①:施術所の「開設者」変更手続き
ポイント
接骨院(施術所)の開設者は、保健所に届出を提出した法人または個人です。法人成りの逆として、個人成りの際には必ず新たに個人名義で施術所開設届を提出する必要があります。
法人の解散前後で施術所の開設届が重複・空白期間が生じると、無届営業とみなされるリスクがあります。
事例①:保健所への届出が遅れ、請求停止に
東京都内で合同会社形式の接骨院を運営していた院長。法人解散の手続きを優先させ、保健所への個人としての開設届を約1か月後に提出した。その間、健康保険組合から「開設者と請求者が一致しない」として療養費の支払いが保留される事態に。結果的に2か月分の療養費が遅延し、資金繰りに大きな影響が出た。
対策: 法人解散の前に、個人としての開設届を保健所に提出するスケジュールを確定させる。理想は法人解散と個人開設を同日または前後1〜2日以内に揃えること。
注意点②:療養費(柔整保険)の受領委任契約の切り替え
ポイント
健康保険の療養費を患者に代わって受け取る「受領委任制度」は、開設者単位で契約しています。法人名義の受領委任契約は、個人成りによって自動的に個人へ引き継がれません。
保険者などに対し、個人として新たに受領委任の申出を行う必要があります。
事例②:受領委任の切り替えを知らず、自費療養費扱いとなってしまった
埼玉県のある院長は、法人解散後に個人で施術を再開。受領委任の申出が必要なことを知らず、法人名義のまま請求を続けた。請求団体から「契約者不一致」で返戻が相次ぎ、3か月間、保険請求がほぼ全額戻ってくるという事態に。患者からは「保険が使えない」とクレームが入り、一部は他院へ流れてしまった。
対策: 受領委任の切り替え申出は保健所への開設届と同時並行で進める。請求団体によっては承認まで2〜4週間かかるため、早めに動くことが肝心。
注意点③:法人の「解散・清算」と税務処理
ポイント
法人を解散する場合、単に「廃業届」を出すだけでなく、清算手続きが必要です。清算中は「清算法人」として法人税の申告義務が継続します。
また、法人解散時に資産(医療機器・内装工事・車両等)が残っていると、それらを個人に移転する際に、みなし譲渡課税(法人に対する消費税・法人税等)が生じる場合があります。
事例③:医療機器の「無償譲渡」で消費税が発生
神奈川県のある院長は、法人解散にあたり、法人名義で所有しているベッドや電気治療器(帳簿価額計100万円)を個人に「無償で引き継いだ」つもりだった。しかし、税務調査で時価相当額に基づく消費税と法人税等の追徴課税を受けた。「タダで引き継いだのになぜ税金が?」と困惑したという。
対策:
•医療機器・備品の適正な時価評価等を行い、売買契約書を作成して法人から個人へ有償譲渡する
•簿価が低くても時価で判断されるため、税理士と早期に相談することが不可欠
•解散決議から清算結了まで、登記・税務申告のスケジュールを一覧化しておく
注意点④:従業員の雇用・社会保険の取り扱い
ポイント
法人が解散すると、従業員との雇用契約は原則として終了します。個人成り後も同じスタッフを雇い続けたい場合は、新たに雇用契約を締結し直す必要があります。また、法人時代に加入していた健康保険・厚生年金(社会保険)は、個人事業主になると原則として国民健康保険・国民年金へ切り替わります(従業員が5名以上の場合は加入義務あり)。
事例④:スタッフへの説明不足で離職が相次ぐ
福島県のある院長は、突然の法人解散をスタッフに伝えたのが解散1週間前。「個人でそのまま続けてほしい」と話したが、社会保険がなくなることへの不安から数名が退職。繁忙期に施術者を含む従業員が減り、患者対応が手薄になった。
対策:
•個人成りを決断したら、数か月前にはスタッフへ説明し、待遇・保険の変化を丁寧に伝える
•社会保険の継続可否・給与水準の変化・有給休暇の引き継ぎなど、個別面談で合意形成する
•雇用保険の手続きも法人解散と同時に離職票の発行が必要
注意点⑤:屋号・口座・リース契約等の名義変更
ポイント
意外と見落とされがちなのが、各種契約の名義変更です。法人名義のまま放置すると、後々トラブルになります。
主な変更が必要な項目:
| 項目 | 注意点 |
| 銀行口座 | 法人口座と個人口座は別物。療養費の振込先変更が必要 |
| 金融機関からの借入金 | 法人名義の融資は個人へ自動引き継ぎ不可。 金融機関との交渉・新規契約が必要 |
| リース契約(医療機器・コピー機等) | 法人解散により自動解約・違約金が発生する場合あり |
| 建物賃貸借契約 | 借主名義の変更が必要。大家の承諾が必要なケースも |
| 電気・ガス・電話 | 公共料金の名義変更 |
| ホームページ・SNS | 法人名・所在地・開設者の表記更新 |
| レセプトコンピュータ | 開設者情報の変更、ソフトウェア契約の切り替え |
事例⑤:リース解約違約金で数十万円の損失
千葉県のある院長。法人解散の際に医療機器のリース契約(残り3年)について確認が漏れ、リース会社から中途解約違約金として約40万円を請求された。個人成り後に同じ機器をリースし直したが、出費が重なり開業資金が圧迫された。
対策: 個人成りを検討し始めた段階で、全契約書を洗い出し残存期間・解約条件を確認する。リースは個人への名義変更ができる場合もあるため、早めにリース会社へ相談を。
まとめ:個人成りのメリットを改めて整理
注意点が多い個人成りですが、適切に実行できれば以下のメリットが得られます。
•社会保険料の削減:役員報酬を設定しなくてよくなるため、法人・個人双方の社会保険料負担が軽減
•法人維持コストの削減・緩和:登記費用代・士業代・均等割(法人住民税)などの支払いがなくなったり負担が減る場合がある
•意思決定のスピードアップ:株主総会など法人のガバナンスから解放される
•所得分散の見直し:規模が小さい院では個人の税負担が低い場合もある
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