個人事業主からの法人化(法人成り)はタイミングに要注意
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個人事業主としてビジネスを開始して、売上が軌道に乗ってくると法人化を検討する時期がきます。
美容関連の事業を経営している個人事業主から法人化のご相談を受けました。
法人化とは、個人事業主から会社設立をして法人にして事業を行なうことです。法人成りと表現したりもします。
その方は12月で会社設立をするか、翌年の1月に会社設立をするかで悩まれていました。法人化のタイミングによって税金が変わるので要注意です。特に消費税には気を付けないといけません。
また、節税のために法人化を検討することが多いと思います。年間収入がどれくらいで法人成りをするのかについてもタイミングについても整理していきましょう。
個人事業主から法人化(法人成り)してスムーズに事業を引き継ぐタイミングとは?
美容関連事業を営むAさんは、消費税課税免除期間が終わるタイミングで法人化しようと1月から会社としてスタートできるよう準備をしていました。
12月までを個人事業主として運営し、翌年1月から法人成りするのがスムーズに事業を引き継げるスケジュールとなるはずです。
・個人事業主の事業年度と法人の事業年度の違い
個人事業主は毎年1月~12月を一区切りとして、翌年の3月15日に確定申告をします。1月から12月が事業年度ということです。
1月から12月までの売上や経費を計算して、納税額を確定させて申告をするわけです。すべての個人事業主がこのスケジュールで動いています。
法人の場合は、会社ごとに事業年度が違います。日本では3月決算の会社が一番多いので、その会社の事業年度は毎年4月から翌年3月になります。
会社は比較的自由に決算月を決めることができるので、3月決算の他にも、9月決算や12月決算など会社ごとに決算月が替わります。
・会社設立タイミングの決算月は12ヶ月後にすることが多い
法人の決算月は、会社設立時に決めます。もちろん設立後に変更することも可能です。
最初の事業年度は、基本的に一年間(12ヶ月)で設定する方が税金面でメリットがあります。たとえば4月に会社設立するのであれば、決算月は翌年3月にするといった具合です。
税金面でのメリットは、1000万円未満の資本金で会社設立をすると、最初の二期間(最長24ヶ月)が消費税課税免除となる仕組みがあるからです。
そして法人の決算申告(確定申告)は決算月から二カ月以内に行ないます。
3月決算の会社であれば、5月末までに決算申告を実施するスケジュールで進めていきます。
・会社に事業を1月のタイミングで引き継ぐの良い理由
Aさんが言うように、スムーズに個人事業主から法人に事業を引き継ぐには1月から法人として事業が始めるように設計することが大切です。
文章で表現するのが難しいのですが、たとえばAさんが4月に法人化して会社としてスタートしたとすると、確定申告の手間が増えてしまうのが理由です。
▼個人事業主の確定申告:2020年1月~2020年3月(法人の事業開始日まで)
⇒2021年3月15日確定申告
▼法人の決算申告:2020年4月(法人の事業開始日から)~2021年3月
⇒2021年5月末決算申告
上記のように1月から3月の短い期間ではありますが、個人事業主として営業している時期がありますので、その分は翌年の3月15日確定申告をしないといけません。
そこで会社設立を1月にすることで、最初の事業年度を丸々一年間とった場合には12月決算となり、個人事業として期が締まったタイミングで法人に移行することができるわけです。
▼個人事業主の確定申告:2020年1月~2020年12月
⇒2021年3月15日に確定申告
▼法人の決算申告:2021年1月~2021年12月
⇒2022年2月末に決算申告
このようにスムーズにつながるので、わかりやすいですよね。
消費税課税事業者の個人事業主は法人化(法人成り)タイミングに要注意!
1月から会社としてスタートするために、1月に会社設立をするという考えで間違いではないのですが、状況によっては注意しないといけません。
もし個人事業主である時期に、消費税課税事業者である場合は1月に会社設立をしてしまうと節税にならない可能性が出てきます。
・個人事業主や法人が消費税課税が免除になるケースを整理
事業として消費税を納める立場かどうかは、二年前の売上が1000万円を超えているかどうかで決まります。
二年前の売上が1000万円以上でなければ、今年分の売上に係る消費税は納めなくて良い特例が適用されます。逆に二年前の売上が1000万円以上の場合は、今年分の売上に紐づく消費税は国に納めないといけません。
個人事業主として開業したばかりであれば、過去の売上という判断材料が無いので、自動的に消費税課税免除というわけです。
Aさんの場合は去年の売上が1000万円を超えたので、そこから二年後にあたる来年から消費税を納める立場になる予定でした。
ただし、消費税を納める立場になるタイミングで個人事業主から法人化することで、今度は法人としてさらに消費税課税免除の期間が始まりますので節税になるという仕組みです。
法人は資本金1000万円未満で会社設立をすると、最初の二年間は消費税課税が免除です。二年前の売上が1000万円を超えるかどうかで判断するのは個人事業主の時と同じ考えになります。
逆に1000万円以上の資本金で会社を設立すると、二年前の売上がどうかに関わらず一期目から消費税を納める立場になります。
・消費税課税事業者が1月会社設立で節税にならない理由とは?
ご相談に来られた美容サロン経営のAさん、個人事業主として来年1月から消費税を納める立場でした。
売上も順調に伸びていて、納める税金も増えているし、消費税を納めるタイミングに差し掛かるということで法人化を決めました。
スムーズに法人化したいと、2020年12月までは個人事業主として運営し、2021年1月から法人成りしようと準備をしています。
しかしここで問題になるのが、会社設立日に設定できるのは法務局が営業している平日のみとなるのです。
1月1日を会社設立日とすることができれば良かったのですが、お正月休みが明けた1月4日が設立日となってしまいます。
そうすると2021年1月1日~1月3日は三日間だけですが個人事業主となってしまいます。この三日間は消費税を納める立場としての個人事業主になるわけです。
個人事業から法人に移行する時は、資産を個人から法人に売るという手続きが必要になるのです。そこで消費税込みの売上が発生し、その分の消費税をたった三日間消費税事業者であるというだけで、納めなくてならなくなるかもしれないのです。
今回でいえば美容サロンとして高額な機器や商品の在庫、内装や外装にかかった費用など資産と位置付けられているものが多く存在していました。この資産を個人から法人に動かす時に消費税がかかり、その消費税を納めるとなると節税という本来の目的から離れてしまいます。
・消費税課税事業者である個人事業主が法人化するタイミングは12月!?
そこで今回の美容サロン経営者の方がとった方法は、12月中に法人を設立して先に会社の器を作っておきます。12月設立で11月決算の会社とするわけです。
12月時点で会社の器はありますが、営業をしていないという状態です。12月の末までは個人事業主として活動し、1月1日からは法人として事業をスタートするように仕組み作りをして、消費税課税事業になる前にスムーズに法人に切り替えることができました。
会社設立月は12月ですが、営業開始月は翌年1月からというわけです。
個人事業主の法人化(法人成り)タイミングするべき利益の額
法人化のタイミングは何も12月にするのか、1月にするのかなど時期に限ったものではありません。
そもそも売上・利益としてどれぐらいになると法人成りをしたらいいのかという問題があります。
・法人化の目的が節税であれば利益800万円を目安に考えてみる
節税の観点で法人化を検討するときは、利益が800万円を超えるかどうかが一つのボーダーラインになることが多いです。
従業員の状況や売上・経費の内訳によって差が出たりしますので、無料で計算できる法人成りシミュレーションサイトを利用するのも良いかと思います。
まとめ
個人事業主が消費税の免税事業者から課税事業者に切り替わるタイミングで法人成りを検討する際は注意が必要です。
今回はあくまでも一例ですが、消費税の取り決めは複雑です。
インボイス制度も始まりますので、事業の置かれている環境によっては適切な判断がもとめられます。無料で相談は承っているので、お気軽にご連絡ください。