サラリーマンが副業で会社設立・法人化をするメリットとデメリット
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2019年に「働き方改革」の関連法案が一部施行され、多くの企業で働き方に対する見直しが進みました。
残業時間の上限規制や有給休暇取得が義務化されたことで、今まで忙しく働いていたサラリーマンの方でもプライベートの時間が増えた方もいるのではないでしょうか。
そうした環境で副業を始めるサラリーマンの方も増えてきているようです。
副業を始めてすぐの頃は収入も限られていますが、ある程度の収入を得られるようになってくると確定申告をする必要が出てきます。
一定の売上を超えると法人化(会社設立)をしたほうが運営や税金などの面で有利になります。また、事業環境によっては、最初から会社を設立してしまった方がいい場合もあります。
そのため、どんな時に副業を法人化(法人成りと言ったりします)をすると良いのか整理してみたいと思います。
サラリーマンが副業で会社設立(法人化)することのメリット
副業で収益を上げている方に会社設立をおすすめすると、「副業はあくまで副業だから、法人化はできないのでは?」「サラリーマンとして働きながら会社を持っても両立できない!」といった声を多く聞きます。
副業自体は気軽に始められても、法人化するとなるとかなりハードルが高く感じられてしまい、なかなか会社を設立するという考えにはならないのかもしれません。
しかし、設立時には手続きに少し手間がかかってしまうものの、副業を行うにあたり法人化していることがプラスに働く場面も多くあります。法人化することでどんなメリットがあるのかをご紹介します。
1.副業の収益によっては節税対策になる可能性がある
個人事業主は、利益(正確には所得)に税率をかけて税金を計算します。法人の場合は税金の計算方法が変わり、法人税を計算したり、役員報酬に対して所得税を計算します。
個人事業主と法人の税金計算方法の違いによって、ある程度の利益が出て来るタイミングで会社設立(法人化)することで節税になる可能性が出てくるのです。
また、社宅の取り扱いなど、個人事業主ではできない節税対策が法人はできます。消費税についても、会社設立後2期は課税免除となるため、個人事業主の課税免除期間が切れるタイミングで法人化すると更に免除期間を延ばせるというメリットがあります。
2.個人事業主より法人の方が社会的信用が高まる
一般的に、個人事業主より法人の方が対外的な信用を得やすくなります。
個人事業主とは取引ができないという会社もあるため、法人成り(法人化)することで取引先の幅が広がる可能性があります。
また、資金調達をする際にも融資を受けやすくなったり人材を確保しやすくなったりと、事業を拡大することを念頭に置くと法人化は必須であると言えます。
3.法人は決算月を自由に決められる
個人事業主の場合は、基本的に1月から12月までが一つの事業年度の区切りとなり、翌年の3月15日までに確定申告を行うことになります。
事業の繁忙期が1月〜3月に重なる場合は、通常の事業だけでなく確定申告の作業も行わなければならないため、事業に思うように時間が割けずに利益を逃してしまったり、全く休めなくなってしまう懸念があります。
一方、法人化をすれば決算月を自由に決められるため、繁忙期を避けて決算月を設定することで、比較的余裕のある時期に申告に必要な事務作業を行うことができます。
また、主要取引先と決算月を合わせることで取引をスムーズに行う工夫もできます。
4.個人へのリスクを最小限にできる
「無限責任」「有限責任」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。
例えば、融資を受けたあとに事業を続けられなくなった場合、個人事業主は「無限責任」のため個人として借金を負い続けなければなりません。
一方で法人の場合は「有限責任」のため、連帯保証人などになっていなければ、個人が出資をしている金額以上の責任は負わなくてもいい決まりとなっています。
サラリーマンが副業を法人化することのデメリット
副業を法人化するときに、なにもメリットばかりではありません。
マイナス面であるデメリットも把握した上で会社設立を検討してみてください。副業を法人化(法人成り)することのデメリットを整理します。
1.会社設立や維持に時間と手間がかかる
個人事業主として副業を行う場合には税務署に届出を行うだけでいいので、比較的簡単に事業を始められてお金もかかりません。
一方で、法人を作るには複雑な書類作成が必要となります。専門家に頼むと手数料が発生しますし、自分で設立するにも最低限の設立費用として株式会社で約25万円、合同会社で約6万円の費用がかかります。
また、利益が出ていなくても、法人住民税が毎年7万円かかります。株式会社の場合は取締役の任期ごとに再任の手続きをしなければいけません。
税理士や社会保険労務士などの専門家に業務を委託する場合にも、個人事業主より法人の方が顧問料が高く設定されている場合が多いため、支出が増えてしまう可能性があります。
2.法人だと社会保険料の負担が発生する
個人事業主の場合には、規模が小さければ社会保険への加入は必要ありません。
法人の場合は従業員がいなくても、役員報酬を受け取っていれば必ず社会保険に加入しなければならず、個人事業主として副業を行う場合より負担が大きくなります。
3.会社の方が経理・会計作業の負担が大きい
個人事業主は規模が小さければ自分で経理作業を行い、確定申告まで済ませることも少なくありません。
中には青色申告会のサポートを受けながら行なっている方もいます。
しかし、法人の場合は申告作業が複雑で、税務調査などのリスクもあるため専門家に経理処理を委託したり、経理担当の社員を雇用したりする必要が出てきます。
サラリーマンが副業を法人化するときの注意点
最後に、全体を通してサラリーマンとして働く人たちが副業を法人化するときの注意点を整理しておきます。
・内緒で副業しているサラリーマンは会社にバレるリスク拡大に注意
サラリーマンが会社を作れないという法律はありません。ただし、会社が就業規則などで副業や兼業を禁止している場合があります。
就業規則を破ると罰則が発生する場合もありますので、まずはそちらをご確認いただいてから会社設立をご検討ください。
会社に内緒で副業をしている場合、個人事業主でも会社にバレるリスクはゼロではないのですが、法人にすることでリスクが大きくなるのは確かです。
理由は会社の社長となり、役員報酬を受け取れば社会保険の加入が必須になりますので、そこから副業をしていることがわかってしまうからです。
副業が禁止されている場合は「株主」として経営に関わる方法もあります。
株主は登記簿謄本(履歴事項全部証明書)に名前も住所も表記されません。
会社ごとに株主名簿を作成するので、そちらに名前は記載されますが、第三者が株主名簿を見る事はありません。
そのため、副業や兼業をしているサラリーマンの方自身は株主という立場をとり、奥様が代表となって会社設立をする事例も多くあります。
・節税を理由に副業を法人化する場合は冷静な判断を
個人事業主として副業をして、利益が大きくなると同時に納める税金も増えていきます。大きな税金をどうにかしたいと思い、会社設立を検討する人も多いです。
そこで注意をしていただきたいのが、その好調な業績は一時的なものでないかどうかといいう点です。
たまたま大きな売上が出ている場合、一時的に利益が増えている状態の場合、今後も継続的にその状態が続くかどうかわからない場合は一度冷静に法人成りを検討しなおした方がいいと思います。
中には法人化した後に、外部環境の変化によって売上が落ち、個人事業主のままの方が良かったという方もいます。
一度法人にしたものを、個人事業主に戻すには会社を清算するなど面倒な手続きとコストが発生することも注意しましょう。
・副業を法人化するなら株式会社と合同会社のどちらがいいのか
個人事業主として仕事をするよりも会社を設立した方がメリットが大きいと判断できれば、ぜひ会社設立も検討してみてください。
一般的に、法人化をする場合は株式会社と合同会社のどちらかを選択することになります。株式会社と合同会社には、設立時にかかる金額や信頼性、会社運営方法など様々な点で違いがあります。
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